
先日、大阪の写真専門学校に通っている友人(19歳)の、学年末制作展に行ってきた。

彼のことは9歳ぐらいから知っているので、大人になったな~と感慨深い気持ちでいっぱいになるとともに、久しぶりの「写真表現」に触れて、控えめでなく
刺激を受けた!!

次回の記事で触れるが、私も30歳の頃に写真スクールで「写真表現」を学んだことがある。しかし自分の想いをうまく言語化できず、挫折した…(また次回に詳しく)。
「写真表現」は、いかにかっこいい写真を撮るかということではなく、写真を用いて自身の考え・想いを表現する、ということである。多くの場合、複数枚の写真(組写真)で構成され、その写真の順番や展示方法にも意味がある。
彼は「いじめ」をテーマに、風景や人物ポートレートの写真16枚の組写真で表現していた。タイトルは「部屋に入る光」。

【写真を観察】
- 人のいないグラウンドや学校の廊下、教室、保健室、階段…
- 抜け殻の布団に、人の歩いていない住宅街…
- なんとも言えない表情でこちらを向いたり、そっぽ向いている人物たち…
人物の写り込みのない風景写真の中に、人物ポートレートが5枚散りばめられている。
【観察して想像】
- この人物は加害者だったり被害者をイメージした人なのかな…?
- 面と向き合っている人もいれば、そっぽ向いている人もいる…それぞれの感情がにじみ出ているのかな…?
- この風景は、独りぼっちで見ている世界を表しているのかな…?集団の中で生きているのに、ほかの人の存在が見えない…
- この小さいスマホも凶器になったり、逆に救いになったりもするのかも…
- どの写真にも、入り込んでくる光を感じる。タイトルにもあるように、希望があるのかも…

私はこれらの写真や作者によって書かれたキャプションから、集団の中の孤独感というものと、少しずつ光に向かって進んでいるイメージを感じた。
人によって写真の捉え方も異なる。例えば高い場所から撮った街の風景(一番右の下から2番目)の写真には、私は大勢が住んでいる中の孤独を感じたが、一緒に観に行った夫は、自殺を示唆しているのかな、と言っていた。作者によると、後者のイメージを含んでいるという。
なるほど、確かに!

作者の細かい意図をすべて汲み取ることは難しいが、こうなのかな?と自分なりに考えることって、
難しいけどおもしろい!

逆に、作者の思わぬ捉え方をする人もいるかもしれない。それもまたおもしろい。
いろいろ考えてひとつの作品に仕上げた彼の思いと努力に、拍手!
こんな感じで、彼の級友の作品もじっくり観て回った。人それぞれテーマが異なり、キャプションを読んでも難解で、理解が追いつかないものもある。頭を使って自分なりに考えまくりの連続。

ところどころ、テーマがシンプルな写真もあって、
ホッとする(笑)

しかし、それぞれが独自の「写真表現」をしていて、すごい!
なんでそんなすごいテーマ思いついちゃったりするの!?

アートは、目に見える作品のみに注目されがちだが、実はそこに至る過程こそがアートだ。ずっと考え続けてきたことを、写真を使って表現する。きっとみなさん、苦しんで考え抜いて、ここに行きついただろうし、これからもずっと考え続けるのだろう。
私にもう少し理解力や想像力があれば、作者の意図をたくさんつかむことができただろうに!

久しぶりの大阪で予定を詰めすぎて時間がなくなったので、後半駆け足で展示を回ったのは悔やまれる。しかし、会場からの電車の中で、夫と写真表現について話し合ったのはおもしろかった。
夫はいま、「見えないけどそこにあると信じることが美しい」というテーマで歌を作ろうとしているのだが、それを写真で表現するならどんな写真がいいか?とアイデアを出し合ったのである。
【写真のアイデア】
- 真横から見た缶ビール
⇒開いているか分からない。中身があると思うとワクワクする - 窓から灯りがもれている家
⇒たとえ人がいなくても、いると感じてホッとする - クッキー缶
⇒まだ中身が残っていると思うと嬉しい - 神社
⇒仏像と違って目に見えないものを信じている - 宗教
⇒信じる人は強い。時に悪いイメージもある

ざっくりすぎるがアイデアを出していく中で、必ずしも美しいだけではないイメージも湧いてきた。ほんの少し考えただけでもテーマの深掘りになったし、実際に写真を撮ってみるのもおもしろいかもしれない。そうすると、また違ったイメージやアイデアが出てくるかもしれない。
なんしか、刺激を受けた!

ちなみに専門学校の展示には、学年末制作の作品のみならず、授業で提出した課題もたくさん展示されていた。例の彼は、ある課題で自身の「母」をテーマにしたフォトブックを制作しており、とても優しい作品になっていた。彼のまなざしが感じ取れるようだった。
そして彼の別の友人の母親は、そのフォトブックを観て、涙したという。同じ母親という立場で作品を観た時に、感じ入るものがあったのだろう。
めっちゃ伝わってるやん。
めっちゃ嬉しいやん…!

私や夫は、音楽で表現活動をしているわけだが、多くの人にはなかなか伝わらないもどかしさを感じたり、誰もがうなるような説得力を渇望したりと、結構悩んでいる。
しかしその中で、ものすごく心に刺さった人が少しでもいると、とても嬉しい。
音楽も写真表現も、
表現という部分で一緒だなぁ~!

そんなわけで次回は、私が以前挫折した「写真表現」について、深掘りしてみようと思う!
写真表現について考える②~写真で思いを表現できるなんて目からウロコ~ | パンダさんのブログ

コメント