
私は、20歳の頃に大阪市内で運転免許を取ったが、自宅周りの交通の便がよすぎたため、35歳で三重県に転職するまで、一切、車を運転することがなかった。(自宅に父の車はあったが、保険を35歳以下適用にすることはなかった。)
しかし、三重県の転職先は、車でないと通勤しにくい場所にあるため、否応なしに車を買うことになったのである。
今まで、車に全く興味がなかったので、どんなものがいいのかわからず「中古の小さな軽自動車かなー」「あんまり街中で見かけすぎず、かわいすぎず、ちょうどよいのがないかなー」くらいに思っていた。
そんな折、三重の友人の紹介で地元の車屋さんに行き、中古の軽自動車を3台試乗させてもらった。
2台はメーカーも車種も忘れたが(なんか、ごめん)、白だか黒だかの普通の軽自動車だったと思う。そんな中、1台だけが!私に訴えかける何かを持っていた。
それは、
- 丸くてうるっとした目(ヘッドライト)
- ほげ?みたいにまぬけな口(バンパー)
- 白くてまるっこいフォルム
まるで小動物のよう!

「かってくれう?」
と言わんばかりの顔で見つめられたら、そら、買うしかないよね。
「これにします」
ということで、見た目で選んだはじめての愛車は、ちょっと古い、平成17年式のダイハツミラジーノ。
色は、真っ白ではなく、ちょっと変わったパールホワイト。かわいいけど、かわいすぎない、そこまで街中で見かけない、この感じがジャストミート!
乗ってみると、こいつがほんとかわいくて、信号が変わったあとの発進時は、
「ゔ、ゔぅーーん、ちょっとまってー」
という感じで加速するのに時間がかかる。もちろん、坂道では、
「だ、だめ、もうしんどい〜…」
と言わんばかりに、頭頂部にたどり着くまでに減速してしまう。
私は、この子に、自分の名前を冠して「まさジーノ」と命名し、かわいがった。
ある時、ちょっと遠出をした際、トンネルを抜けた坂道を上っている時、かなりの坂道だったため、まさジーノは、顔を相当真っ赤にしてがんばっていた。
「あ、まさジーノ、ヤバい…!」
…と感じたけど、単に、トンネルを抜けてもライトを消すのを忘れていたため、スピードメーター部分がオレンジ色に点灯したままで、それが、まるで顔を真っ赤にしてがんばっているかのように見えていただけだった。
ヤバいのは私の方だった。
乗り始めて1年も経っていない内に、何年後かに他の車に乗り換えることを想像しては、寂しくて泣けてきたりもした。

そんな風に5年間愛用した、まさジーノだったが、ついに、手放すその時がやってきた。
結婚時に夫が持ってきた車には週末しか乗らないため、維持費などを考えて、いずれか一方を手放すことにしたのだが、
- 新車6年くらいの7人乗りの普通自動車
- 中古16年くらいの4人乗りの軽自動車
の2択となると、まぁ、いろんなことを考えて、「2」のまさジーノを手放すことにしたのである。
せめて、少しでもいいところに引き取ってもらおう、と思って査定に出したが、いずれの車屋さんも「値段はつきません」だった。
あ、0円てことですか…。
県内の少し遠方に1ヶ所だけ、平日に持ち込みで8,000円の買い取り、というところもあった。8,000円…。
しかし、時間や手間を考慮して、1番丁寧に対応してくれたところに、0円での引き取りをお願いした。
最後の日も、まさジーノは、ちょっとまぬけな顔で笑っていた。

ありがとう、まさジーノ。
あなたとの日々は忘れないよ。
次もいい人に乗ってもらってね。
さて、そんなわけで、私はいま、夫の持ち込んだトヨタのシエンタに乗って通勤している。はじめは大きさに慣れず怖かったが、慣れると普通車って…
めっちゃ快適やん!
多少の段差ではガタガタしない!
ドアが重めでバスっと閉まる!
座席シートがしっかり包み込んでくれる!
エンジンの回転数が上がりにくい!
また手放す時に寂しくなるので、なるべく擬人化しないようにと思っているが、「しえたろー」と名付けてしまった。
案外、発進時の加速がちょっぴり苦手なところが、かわいい。


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